映画「永遠の門 ゴッホの見た未来」感想

映画「永遠の門 ゴッホの見た未来」を鑑賞してきました。

ゴッホ展が来年1月に兵庫県立美術館にやってくるので、「ゴッホのことを事前に勉強しておこう!」というのがきっかけ。予告チラシなどではゴッホが織りなす黄金の世界が表現されていたので、美しい映像が楽しめそうとワクワクして、レディースデーに映画館に行ってきました。朝8時半からのスタートということもあってか、4人の貸し切り状態という贅沢な鑑賞ができました。さて、映画の感想は…、絵画鑑賞を控えてゴッホの勉強をしようと思っていた私の期待を大きく裏切る内容でした!

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下記、感想です。

<映画のあらすじと概要>
天才画家ゴッホが、フランスアルル地方で過ごした晩年の2年について描かれたもの。貧しく1つも絵が売れず、周りの人からも疎まれ、苦悩するゴッホ。彼をとりまくカフェの女主人、ゴーギャン、弟テオ、医師、牧師との会話を通して、ゴッホが晩年どのように感じて生きていたのかを浮彫りにしている。

 

【ここからネタばれあります】

<映画の感想>
まず、ゴッホ演じる、ウィリアム・デフォーさんが自画像で見るゴッホそのもの!麦わら帽子をかぶって歩く姿など、「ゴッホが生きていたらこんなんだったのだろう」とリアルに想像ができてしまいました。それゆえの狂気や孤独など怖さも感じます。そして冒頭から、人物の迫力あるアップが続いてなんとも言えない違和感が。途中からようやく、これがこの映画の伝えたいことなのかと気づきました。

つまり、この映画はゴッホの視線で描かれているのです。ゴッホが見た女主人、ゴーギャン、そしてゴッホが見た自然、太陽の光。ゴッホが捉える景色は、時にすごく揺れたり、曇ったり、光ったりするので、とても不思議な感覚に陥ります。最後は、ゴッホが見出した光や希望について描かれているものの、全体的には暗く重い映画でした。

この映画の後、クリムト展を見にいく予定でしたが、私はゴッホの感覚でいっぱいになり中止にしました。また、当初ゴッホの絵が好きな小4の息子と一緒に鑑賞しようかと一瞬思ったのですが、一人で来てよかったです。お子さんはもう少し大きくなってから見るのをお勧めします。

<心に響いたポイント>

  • なぜ、あなたは絵を描くのか?

これが大きなテーマだったように感じました。誰にも評価されず、自分も悩み苦しみながらも描き続けたのはなぜか?ゴッホは「それ以外に何もできないから」「神が才能を与えたから」と答えます。当時、ゴッホが描く絵は周りの人には不快なもの(agry)でしかなったのに、ゴッホは自分が見る素晴らしい自然を描かずにはいられなかった。ゴッホは、なぜ神は人が不快と感じる絵を描く才能を与えたのかと苦しみます。その後、世界がゴッホを高く評価しているだけに、なぜこの時代にうけいれられなかったのか?見ていても苦しくなります。

ゴーギャンは室内で頭の中にあるものをじっくり描くのに対して、ゴッホは屋外に出て目の前にある自然を、素早く描く。ゴッホとは正反対のゴーギャンゴッホを評した言葉「お前の絵はまるで彫刻のようだ」。映画では、この言葉がゴッホに自分の絵のあり方を気づかせは、自分のスタイルを確立させるきっかけとして用いられていたのが印象的でした。

  • これは、”ゴッホ”を体験する映画!?

映画では、田んぼの稲穂が太陽の光で黄金に輝き、それが一面に広がります。一瞬の快楽とでもいうべきゴッホの世界をこれでもかと見せつけられます。この映画は、ゴッホの伝記にしては不十分だし、ゴッホがどのようにしてこのような絵を描いたのかという説明にしても不十分だし、絵画自体の解釈もありません。

ただ、ゴッホの目にはどのように世界が映っていたのか。光り輝く景色だけでなく、人との距離、自然との距離、それら独特の感覚も体感できる映画なのだと思いました。

 

最後に

ゴッホがまだ生きていた時に、既に高い評価を得ていたという設定、またゴッホを馬鹿にする少年らによって殺されたという設定が、少し驚きでした。死については諸説あるそうですが、ゴッホは自分をみじめに思って自殺したのではない、自分のスタイルで描く喜びや意義を見出していたという点がこの映画で伝えたかったことなのかもしれません。しかし、彼が描いたデッサンが2016年まで発見されないままだったというのも、彼がその時代には認められることのなかった存在だったということを改めて感じさせ、切なくもなる映画でした。

 

ゴッホ展に向けて絵画鑑賞の勉強にしようと思って見たら、おおいに期待を裏切る作品でした。でも、ゴッホそのものを体感できる、とても不思議なこれまでにない作品だと思いました。映像は結構揺れてますし、曇ることもあるので、ちょっと後ろの席から見るのをお勧めします!ぜひ、映画館で!

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